「更年期には大豆を食べると良い」というのはよく聞く話ですね。
大豆には、良質なタンパク質、炭水化物、脂質、食物繊維、カルシウム、マグネシウム、鉄、ビタミンなどさまざまな栄養素が含まれています。
また、大豆イソフラボンからつくられる「エクオール」という成分が、女性ホルモン「エストロゲン」と非常によく似た化学構造を持っているとされています。
ところがこの「エクオール」、大豆を食べた全ての人がその健康効果を得られるわけではないことも明らかになっています。決め手は何なのでしょうか。
エクオールがつくられるちょっと小難しいお話
一般に大豆食品に含まれるイソフラボンは「グリコシド型イソフラボン」といって、糖類がついた化学構造をしています。このままでは体内に吸収するのに時間がかかり、その多くが体外へ排出されてしまいます。しかし腸内細菌によって糖類が分解されると「アグリコン型」に変化して、体内に吸収されやすくなります。
さらに「アグリコン型イソフラボン」は「グリシテイン」「ゲニステイン」「ダイゼイン」という成分を持ち、そのうちの「ダイゼイン」が「エクオール産生菌」という特定の腸内細菌によって代謝されると、「エクオール」という物質がつくりだされます。
「エクオール」は、女性ホルモン「エストロゲン」に非常によく似た化学構造を持っていて、細胞内の「エストロゲン受容体」と結合します。
決め手は腸内細菌!!
このように、大豆を食べてからエクオールがつくられるまで2段階で腸内細菌が活躍しています。
とくにエクオールをつくりだす「エクオール産生菌」は日本人のおよそ2人に1人しか持ち合わせていないそうです。
そのために、同じように大豆を食べても腸内細菌の働きが良い人・良くない人、エクオール産生菌を保有する人・保有しない人で、「イソフラボン効果が十分に得られる人」と「イソフラボン効果が十分に得られない人」がいるというわけです。
- グリコシド型……吸収されにくい
↓
グリコシド型+腸内細菌→アグリコン型
↓
- アグリコン型……吸収されやすい
- グリシテイン
- ゲニステイン
- ダイゼイン+腸内細菌(エクオール産生菌)→エクオール
エクオール産生菌
日本人の2人に1人しか持ち合わせていないという腸内細菌「エクオール産生菌」。保有する人であっても、十分な数を持っている人は少ないのだとか。
はたして自分はどうなのか気になるところですが、それを検査できる「ソイチェック」というキットが販売されています。自宅で採尿してポストに投函するとWEBで結果が確認できます。テレビや雑誌でも紹介され、2017年時点で累計10万人が検査を受けたそうです。
私も検査を受けてみました。【保有はするが十分な数ではない】という結果でした……。「注意事項」や「検査手順」↓参考にしてみてください。
エクオール産生菌を増やすには
大豆イソフラボンの健康効果を十分に得るために必要な「エクオール」。エクオールをつくりだすために必要な腸内細菌「エクオール産生菌」。このエクオール産生菌を増やす手だてはあるのでしょうか。残念ながら、まだはっきりとした解明はされていないようです。
しかしながら、西側諸国の人よりも日本人の方がエクオール産生者が多いとされています。これは日頃から豆腐や納豆、味噌などの大豆食品を食べているからではといわれています。また、腸内細菌の餌となる野菜や海藻を食べたり、腸内環境を整えるために運動をしたり睡眠を十分にとるなども効果があるのではといわれています。
- 大豆食品・野菜・海藻・乳製品をよく摂取する人
- 日常的に軽い運動をしている人
- 十分な睡眠をとっている人
エストロゲンの働きとは
女性ホルモン「エストロゲン」は下の項目にあげたような全身の健康や美しさに関わる働きを持つ、大変ありがたいホルモンです。「天然の美容液」などとも呼ばれています。
ところが40代に入ると「エストロゲン」の分泌量は急激に低下します。「天然の美容液」が減っていくばかりか、ホルモンバランスが乱れてさまざまな不調の引き金ともなります(更年期の基礎知識)。
- 妊娠に備え子宮内膜を増殖させる
- 自律神経を活発にする
- 肌や髪、粘膜の潤いを保つ
- 代謝を助ける
- 骨や血管を丈夫にする
- 脳細胞の老化を防ぐ
など……
- 循環機能の制御
- 呼吸機能の制御
- 消化機能の制御
- 発汗、体温調節機能の制御
- 内分泌機能の制御
- 生殖機能の制御
- 代謝機能の制御
- 精神安定の制御
など……
大豆は栄養バランスのとれた食品
エクオールがつくれる人もつくれない人も、積極的に大豆を摂取することは体にうれしいことに違いありません。大豆は栄養バランスのとれた体に良い食品です。良質なタンパク質、炭水化物、脂質、食物繊維、カルシウム、マグネシウム、鉄、ビタミンなどさまざまな栄養素があの1粒の中に含まれています。
さらには、大豆食品をよく摂取している人はエクオール産生能力が高い傾向にあるとされていますので、食事バランスを保ちながら積極的に食生活に取り入れましょう。